民法改正・成年年齢の引き下げについて

令和4年4月1日から成年年齢が20歳から18歳に引き下げられました。成年年齢の改正は約140年ぶり。満18歳になれば本人の意思に関わらず、成年に係る諸規定が適用されることになります。

 

◎改正の背景

 

公職選挙法改正により選挙権年齢が18歳に引き下げられました(平成28年6月施行)。これに連動して憲法改正の国民投票権も18歳からとされました。諸外国の多くが成年年齢を18歳としているなども背景にあるとされています。

 

◎18歳と19歳の法律行為

 

18歳と19歳(新成年者)は施行日以降、単独で法律行為をすることができる反面、取消権を失うことなどを理解しておく必要があります。

取消権とは、未成年者が法定代理人の同意を得ずに行った法律行為を後で取り消すことができるという未成年者側の権利です。特に、不動産取引における法律行為の意思確認などには、取消権が十分に機能することを必要としています。

また、この改正法は、本施行日以降に18歳になった者に適用されますので、施行前に成人した者の法律行為が遡って成人の行為とみなされません。

年齢は「出生の日」から計算されますので、満18歳に達する日をもって成年となります。

 

◎遺産分割協議

 

利害関係のある親子間で遺産分割協議をする場合は、子(未成年者)については家庭裁判所が選任した特代理人による協議が必要とされる18歳と19歳についても施行日以降は成人となるため、この協議を単独ですることができるようになりました。

しかし、法律上では単独でできるとされていても、18歳~19歳は実質的には未だ親の支配下にあると想定されますので、このような遺産分割協議に基づく相続登記の際には、その結果に至るまでの過程や経緯等を十分に確認する必要があります。

 

◎婚姻ができる年齢の規定

 

男女ともに成年年齢となる18歳からと規定されました。(法第731条:旧法では女性は16歳から)。これにより、未成年の婚姻がなくなり、父母の同意(旧法第737条)は削除されました。なお、4月1日施行時に16歳以上18歳未満である女性には旧法が適用され、婚姻することができます。

 

◎20歳が維持された既定

 

養親となれる年齢については、旧法「成年」から「20歳」に明文されました。(法第792条)。この身分行為については「20歳」の実質年齢が維持されたことになります。

このほか、「20歳」が維持された関連法は、

①  飲酒・喫煙(未成年者飲酒禁止法・未成年者喫煙禁止法)、

②  馬券・車券・舟券購入(競馬・自転車競技法・小型自動車競走法・モーターボート競走法)などが該当します。

 

◎おわりに

 

日本では、成人は「20歳」という慣習が根付いているため「18歳から」がすぐに浸透していくとは言い難いと思われます。若年層のクレジットカード契約をはじめとする消費者被害は年々増加傾向にあります。これらの防止と被害者への救済措置の徹底などを早急に図ることも必要でしょう。

 

at home TIME 2022/4 より抜粋