相続財産の評価に関する最高裁判決について
またしても、地主様の節税策(脱税ではなく節税です)が封じられてしまいました。
①今年2022年4/19に最高裁判決が出されました。国税庁が決定し、路線価(国税庁が決定・公表している土地の評価額)による評価額を認めず、いわゆる時価による評価により約3億円の追徴課税処分を「適法」としました。
②養子(民法上の養子でなく相続税法上の養子)を一人しか認めなくなりましたし、相続税額が2割加算となりました。以前は養子の数に制限はなく、また、2割加算もありませんでした。
③高額な相続税を支払うために、相続資産を売却した場合、取得費として以前(7年前まで)は「土地等の価額の合計額」でした。しかし、今は取得費に加算できる額は、「その譲渡した財産の価額」だけとなりました。ですので、いわゆる相場の20%以上の高価格で売却できる『今』は相続以前でありましても、お手取りは5年後、10年後のご相続よりも有利となります。
『今』ご売却をご検討あるいはご実行される方(法人・個人の方)が増えてきてます。弊社は、高価格での売却を最大努力しており、その通りに成約しております。
相続財産である不動産の評価について、いわゆる路線価評価ではなく、税務署が採用した鑑定評価額を認める最高再判決がありました。2022年4/19最高裁判決。
【本件の内容】
被相続人は、平成21年まで不動産賃貸業を営む法人の代表でした。そして、亡くなる3年5カ月前に甲不動産を約8億3700万円(借入金6億3000万円)で、2年6ヵ月前に乙不動産を約5億5000万円(借入金4億2500万円)で取得しました。いずれも賃貸用不動産です。平成24年6月に相続が開始し、相続人は、甲・乙不動産を財産評価基本通達に基づき評価し、購入資金として借りた借入金残高約10億円を債務控除し、小規模住宅地等の評価減を基礎控除の範囲内で相続税ゼロという申告をしました。これに対し、税務署は、評価通達第6項に基づき、不動産鑑定評価額より評価をし直し更正処分(相続税の総額を2億4049万8600円とするもの)を行ないました。なお、相続の9か月後に相続人は乙不動産を約5億1500万円で第三者に譲渡しています(表)
【最高裁第三小法廷の判決(令和4年4月19日)要旨】
今回の判決に先立ち令和4年3月15日に最高裁で口頭弁論が開かれました。弁論が開かれたことにより上告人(納税者)の逆転勝訴を期待する向きもありましたが、上告は棄却され、国=税務署の勝訴が確定しました。なお、裁判官5名全員一致で、反対意見はありませんでした。判決の趣旨は次のような内容です。
①相続税法22条は相続等により取得した財産の価額を相続時における時価としている。税務署が採用した鑑定評価額は、それぞれの不動産の客観的な交換価値としての時価であると認められ、これが財産評価基本通達(以下、評価通達)の評価額を上回るからといって、相続税法第22条に違反するものではない。
②他方、租税法上の一般原則としての平等原則は、租税法の適用に関し、同様の状況にあるものは同様に取り扱われることが要求される。
③被相続人と上告人らは、各不動産の購入・借入れが近い将来予想される被相続人の相続において、上告人らの相続税の負担を減免させることを知り、これを期待して、あえてこの購入・借入を企画して実行したのだから、租税負担の軽減を意図して行ったといえる。従って、本件各不動産の価額を評価通達により評価した価額を上回る価額によりことは、前記の平等原則に違反しない。
④以上によれば、各更正処分において、税務署長が本件相続に係る相続税の課税価格に算入される各不動産の価額を鑑定評価額に基づいたことは、適法というべきである。
表 各不動産の価額と評価額の比較
(注1)相続人は、財産評価基本通達(いわゆる路線価評価等)により評価している。
(注2)税務署は財産評価基本通達ではなく、不動産鑑定評価額により評価している。
at home TIME August 2022 NO.489 より抜粋