競売の流れについて
住宅ローンを滞納し始めると、およそ1~3か月の間に債権者である銀行から様々な書類(催告書や督促状)が届くようになります。滞納1か月前後であれば、とりたての際の文言はまだ厳しくありません。
【1】督促状
住宅ローンを滞納し始めて、2カ月後ほど経過した頃に届くものが「督促状」となります。 その内容には、支払期日に入金が確認できていないことや、滞納期間やその金額、「期限の利益」を喪失する可能性について、また、滞納が続く場合は競売や一括請求をすることもあることなどが記載されています。
【2】催告書
督促状に従わない場合、次に「催告書」が届きます。 基本的には督促状と同様の内容となりますが、催告書は“最終的な督促状”となる、かなり厳しい内容の通知書となります。 催告書に記載されている期日までに支払いがなされない場合、債務者は分割支払いの権利を失い、銀行は保証会社に代位弁済を求めることとなります。
住宅ローンを払えない場合の対処法は状況に応じて様々ありますが、まずは金融機関へ相談をしてみましょう。
ここでは月々の返済額の見直しや、一定期間の元金の据置などが提案の材料となります。
他に住宅ローンの借り換えや、保険適用を利用することが考えられますが、いずれの方法でも解決しない場合は売却を考えなければいけません。
住宅ローンが残っている場合は、任意売却という手段を使う必要があります。
住宅ローンを3ヶ月以上滞納したうえ、何も対処せずにいると、金融機関からの通知内容は徐々に厳しいものに変わっていきます。
住宅ローンの場合、一般的に返済を合計6回滞納すると期限の利益を喪失してしまいます。(6か月連続での滞納ではなくても期限の利益を喪失してしまうため注意が必要です。)期限の利益を喪失すると、「期限の利益喪失に関する通知」が届きます。
【期限の利益の喪失】
借金の分割払いができなくなることです。住宅ローンなどの借入を利用すると通常分割で返済していきますが、期限の利益を喪失すると分割払いができなくなって「一括払い」しなければなりません。滞納期間や滞納金額が一定以上になると「期限の利益を喪失」する契約内容になっているケースが多数です。
住宅ローンなどの借入時には、決められた期日までに決められた金額を支払う約束をするものです。たとえば「3,000万円の住宅ローンを組み、35年間で分割して毎月末に71,428円ずつ(プラス金利)を支払う」などと定めます。このように「返済を分割払いできること」を「期限の利益」といいます。
ところが借主がローン返済を滞納すると「決められた期日に決められた金額を支払う」という契約に違反する結果になります。いつまでも債務者が支払をしなければ金融機関には不利益が大きくなるので、一定期間滞納が続いたら期限の利益が失われる約束になっているのです。
代位弁済とは、第三者または共同債務者が(保証人、連帯債務者等)が債務弁済することです。弁済者は、弁済した全額について債務者に対して求償権を取得し、その範囲で債権者が債務者に対して持っていた担保権などを(弁済者が)代位して行使することができることになります。
住宅ローン契約において、保証会社と「保証委託契約」を結んでいる場合、契約者が返済不能になったら、保証会社が本人に代わって返済を肩代わりし、以後、債務者は保証会社より残金の一括返済を求められることになります。なお、代位弁済になる期間は、金融機関により異なりますが、延滞して3カ月~6カ月で代位弁済が行われるようです。
債権者が債務者や保証人から抵当権及び根抵当権の設定を受けた不動産に対して、その不動産を管轄する裁判所に対して担保不動産競売を申し立てることを言います。
競売は裁判所が売却までの全ての手続きを行ってくれるので、競売を申し立てる側(債権者)にとっては、資金を回収するメリットがあります。
競売開始決定通知がきたということは、債権者が競売の申立をしたことを意味することから、住宅ローンを滞納しはじめてから既に半年近く時間が過ぎていることが一般的です。
競売開始通知がきたからといってすぐに競売が実行されるものではありません。
競売開始決定の通知がくると、1ヶ月後くらいに「不動産の現状調査について」の通知が届きます。
不動産の現況調査とは、裁判所から派遣された執行官と鑑定人による競売予定物件の調査のことです。
【現況調査に拒否権はない】
この際、関係者への聞き取り調査も行われるため、債務者は現況調査を拒否する事はできません。 執行官らの入室を拒否したり、妨害したりした場合は公務執行妨害として警察に連行される事もあります。
これは、裁判所の執行官が国によって認められた強い権限(自宅に立ち入る権利、カギを開ける権利)を持っているからです。
執行官は主に権利関係の調査を行い、鑑定人は価格の調査を行います。執行官や鑑定人の調査結果は最終的にはインターネットに公表され、競売の入札参加者の重要な判断材料となります。
「不動産の現状調査について」の通知が届いた後は、1ヶ月ほどすると「配当要求終期の公告」と呼ばれる手続きが行われます。これは、対象物件が競売されることを他の債権者へ知らせるために行う裁判所の手続きを指します。公告といっても、実際には家庭裁判所に資料が置かれ、誰でも閲覧できる状態になっているだけです。
配当要求終期の公告では、誰でも競売予定物件を見ることができるため、任意売却の会社も裁判所で情報収集していることが多いです。
配当要求終期の公告が始まると、債務者(住宅ローン滞納者)の自宅に任意売却の会社が訪問営業に訪れたり、中には着手金を要求するような怪しい営業もあるため、債務者にとっては警戒をしておきたい時期となります。任意売却をするために着手金などは必要ありません。
配当要求終期の公告から2ヶ月ほど過ぎると、債務者に最低売却価格の通知が届きます。
さらに、2ヶ月ほど過ぎると執行官や鑑定人が調査した結果が、家庭裁判所が運営しているインターネット上の「不動産競売情報サイト(通称「BIT」)」に公開されます。BITに情報が公開されると、その後、2週間後に入札が開始され、さらにその2週間後に開札となります。
競売は、開札期日の前日までなら申立者の単独意思のみで競売を取り下げることが可能となっています。
開札が行われてからの取り下げは、買受人の同意を必要とするため、確実に取り下げができる期限は、開札期日の前日までとなります。
開札が行われた後は、1ヶ月後には裁判所から売却許可が下り、さらに1ヶ月後に引き渡しという流れになります。